この度、特定非営利活動法人日本ジビエ振興協議会は、「外食アワード2015(外食事業者部門)」を授賞いたしました。
皆様が活動趣旨に共感くださり、お力添えいただきながら活動を広げてきたことの賜物であると思います。
心より感謝申し上げます。
日本国内で捕獲された鹿や猪を食肉として活用する動きが始まって10年余り経った現在、国内のジビエ振興はいろいろな意味で節目を迎えています。
日本食品成分表には、いよいよエゾシカとニホンジカの栄養成分が掲載されることになったそうです。
これまで一部の人が個人的に楽しむ食材であったものが、多くの人が食す可能性のある一般的な食材として位置づけられた証だと思います。
北海道では早くから被害対策とともに食肉利活用の先進的な取り組みがなされ、一足先に安全なエゾシカの流通が進んでいますが、本州ではジビエの販売が産業として成り立つ状況まで進んでいる地域はまだ少数です。
それでも、鹿や猪の農林業への食害は進む一方で、被害対策に迫られる地域は拡大しています。
被害対策として捕獲した後には、食肉利用、皮や骨の活用を考える動きにありますが、現場では衛生や肉質に対する意識が、ほかの食品業界に比べて低いところが多いのが現状です。
金属検出器を導入している施設もまだごくわずかです。
そんな中、2014年11月には、厚生労働省から「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」が発表され、これまでなかった国としての管理基準が示されました。
農林水産省にはジビエの利活用について相談に乗ってもらえる専門の部署がありませんでしたが、2015年10月に設置された農村振興局に鳥獣対策室が入るとともに、「鳥獣利活用推進班」という新しい部署が置かれ、ジビエの食肉利活用について相談できるようになりました。
これらの動きにより、日本国内で捕獲した鹿や猪をより無駄なく活用する動きが加速されていくことと思います。
同時に、ジビエの流通・販売従事者の安全に対する意識向上の後押しにもなるでしょう。
また、ジビエには流通における規格も全国で共通したものがなく、各々の獣肉処理施設がそれぞれの規格により販売を行っています。
それにより、使用者が複数の処理施設に、ジビエの同じ部位を注文した場合でも、それぞれから異なる状態の商品が届く状況となっています。
出荷基準のある家畜と違って個体の大きさもまちまちなジビエですから、すべてを規格に当てはめるのは難しい部分がありますが、大量のジビエの安定供給を求める大手食品メーカーの方々からの要望もあり、流通におけるジビエの肉質や形状の目安になるルールが必要だと考えました。
日本で初めての取り組みであることから、ジビエを供給する側の獣肉処理施設や自治体、供給を受ける側の食品加工業、食品流通・販売業の方々双方にメンバーとなっていただき、各分野からアドバイザーをお招きして昨年11月に「国産ジビエ流通規格検討協議会」を設立しました。
来年度から本格的に専門家を交えた検討会や実証調査を行い、供給側も消費者側も納得できる規格を作ることができればと考えております。
捕獲現場では捕獲した個体をすべて活用できているわけではありません。
捕獲しても処理施設に持ち込んで内臓摘出するのが遅くなったために、食肉として利用できない場合も多くあります。
捕獲する立場から言えば、一旦山に入ってから獣肉処理施設のある里に何度も往復するのは大変で、捕獲の度にこまめに処理するのが難しいのです。
しかし、廃棄率が高いと獣肉処理施設の運営も大変です。
そこで、捕獲した個体の利用率を引き上げるため、林道まで入って解体処理ができる「移動式解体処理施設」という処理施設の機能を搭載した車を開発しています。
初めての試みですので、第一号車は実証実験のために日本ジビエ振興協議会で導入し、さまざまな地域で試しに使ってみていただきたいと考えています。
実際に使用する中で改善を要する部分も出てこようかと思いますので、各地域で導入する際にはそれを反映させたものとなるでしょう。
このように、ジビエの食肉利用には、流通、外食、食品加工に関わる方たちと連携して制度を整えたり、捕獲や一時処理の段階で食品を生み出す観点での改善や現場のレベルアップを図ったりと、まさに川上と川下が手を取り合い、理解を深めながら進めることが不可欠だと考えます。
私たちは今後もこの活動を大地に根を張るものとなるまで育ててまいりたいと思います。
「安全で美味しいジビエを食べる」という部分で皆様にも関わっていただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
特定非営利活動法人日本ジビエ振興協議会
理事長 藤木徳彦