2016.08.29

vol.33 腎臓病食について 低たんぱくフレンチコース

エスポワールでは数年前から、腎臓病を患い、食事制限をされている方々にもフランス料理を楽しんで頂けるよう、低たんぱくフレンチコースの提供にも取り組んでいます。

スタートした当初に比べると、徐々に低たんぱくフレンチコースをご予約いただくことが増えてきました。このような腎臓病食をはじめたきっかけは、長野県にある松本大学の健康栄養学科の講師をシェフが引き受けたときの、ある家族との出会いがきっかけでした。

授業の一環で提供したコース料理の栄養価をすべて表記した事に、お父さんが腎臓病をわずらっているという家族が「安心して食べることが出来た。」とわざわざお礼をきてくれたそうです。詳しく話を聞き、そこでたんぱく制限の食事の事を知ったそうです。そのことがあり、シェフは腎臓病食について調べ始めました。ちょうどその頃に入社した1人の厨房スタッフが管理栄養士の資格を持っていたことで、彼からも情報を聴きながら低たんぱくフレンチを考案し、試作していきました。私もそうだったのですが、腎臓病食というと、たんぱく質を抑えた料理という大まかなもので、実際に食事を提供するにあたって、その難しさを実感しました。

栄養価の数値計算はもちろん、見た目のボリュームや、一皿を仕上げるにあたっての、すべての食材の計量とやり繰り、そして何よりも美味しくなくてはいけません。それらをクリアできるよう何度も打ち合わせと試作を重ねます。そうした中から低たんぱくフレンチコースが出来上がって行きます。厨房では各ポジションの担当者が、調理工程の把握と材料の仕入れ、計量を行って当日に臨みます。お客様の予約に関しては、ホールスタッフが電話や、メールでお客様の状況を細かく聞きます。エスポワールで作る料理の数値で対応出来るか、処方されている薬の作用やアレルギーなどで食べられない食材はないか,また主治医の先生からの特別な食事の指導は受けているかなどです。

ご予約の当日は、コース料理の栄養価をすべて表記したメニューを準備し、材料の計量もすべて終えた状態でお迎えします。そこからは、通常の料理と同じように調理を進めていき、興味のある方は料理の工夫や作り方や、エスポワールのスタイルでもある背景のある食材の話などをさせて頂いてます。腎臓病食と通常食のお客様が同じ空間で、不安を感じずに楽しい時間を過ごしていただくのが、エスポワールの理想であり、やりたかったことです。お客様が皆笑顔でお料理や会話楽しんでいる、そのようなシチュエーションを、シェフをはじめスタッフ皆で思い描きながら、これからもお料理を作っていきたいと思います。                   ソムリエ 野村 秀也

低たんぱく食(例)

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