2021.01.30

Vol.38 ワインとの出会い

エスポワールの地下セラーには、オープン以来少しずつ集めてきたワインが数多く保管されています。

私もソムリエとして多くのワインの仕入れ、管理に関わってきましたが、仕入れについて様々なワインとの出会いがありました。

今回はその中でも印象に残っているものをご紹介します。

 

エスポワールでは国産のワインに関しては、直接ワイナリーさんから譲ってもらうことが多いですが、海外産ワインの主なルートとしては、ワイン輸入業者さんや酒屋さんから仕入れることがほとんどです。

私は酒屋さんに行くことが好きで、レストランが休みの日には、酒屋さんの方とワインについての話をする事をとても楽しみにしていました。その中でワインのラベルや、ヴィンテージ、価格なども覚えるようにしていました。ソムリエの勉強は酒屋さんでしたといっても過言ではないくらいです(笑)

 

数年前、お店の休日にふらっと酒屋さんに立ち寄り、いつものようにワインを眺めていると、店主の方が、「実はこのワインは、常連のお客様が購入してしばらくうちのセラーで預かっているんですが、どうも体調を崩されたみたいでワインが飲めなくなってしまったそうなんです。素晴らしいワインなんですけどね。」という話がありました。

そこには木箱に収めれた数本のワインがありました。ちらりと見えたボトルの形状、ラベルの雰囲気から、ボルドー産のワインだとすぐにわかりました。

購入された方は大変なワイン好きであった事と病気をされた事を聞きました。私も大のつくワイン好きなのでその無念さは痛いほど伝わってきました。そんなはなしの中で店主から「お客様にワインを返品という形で戻してもらって、ほしいという方に譲ってよいか聞いてみましょうか?その方がワイン好きだったお客様にとってもいいんじゃないかな?」との話がありました。

私は聞いてみてほしいと伝えました。

それから数日後、店主から電話がありました。

「あのワインは欲しい方に譲りたい」と回答があったことを聞きました。私はすぐ購入の意思を店主に伝えました。うれしい気持ちもありましたが、これらのワインを楽しむために一度は手に入れたのに、残念ながら手放すことを決めた気持ちを考えると複雑な気持ちでした。

しかし同時に沸いてきたのは、その気持ちを受け継ぎ、このワインたちを大切に保管して一番よい状態で提供し、楽しんでいただく事が自分に出来ることではという考えでした。

譲り受けたワインはエスポワールの地下セラーで、さらにおいしくなるように大切に熟成をさせています。

 

ワインの魅力には蔵の歴史、栽培、醸造方法、テロワール、作り手の事以外にも、エスポワールのワインセラーに来るまでの出会いのストーリーがあります。

そのような出会いのストーリーもワインに特別な味を加えてくれると思います。

引き継いだワインは「1982年Cheteau Mouton Rothchild」「1982年 Chateau Cheval Blanc」「1986年 Chateau Margaux」「1982年Chateau Gruaud Larose」

大切にされたワインは、家具や器と同じように大切に受け継いでいきたいと思います。

 

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