エスポワールでも多くのファンを持つ食材、信州新町産のサフォーク羊。
どんなところで、どのように育てられているのか?先日、長野県長野市の信州新町へ行き、峯村さんのお話を伺ってきました。
育て方についてお話をお聞きすると、朝6時の羊の餌やりに合わせて生活サイクルが回っていたり、4月には総量が1tを超える羊の毛刈りがあったり、1番寒い時期の1、2月が出産の時期にあたるので、あちらこちらでお産が行われ目が離せなかったりと、畜産業が大変なのは、なんとなくわかっていたつもりでしたが、生の声を聞き、改めて生産者さんへの感謝を忘れてはいけないと実感しました。
また、お客様を魅了する、峯村さんが育てるサフォーク羊の味の良さの秘訣も知ることができました。
大きく分けて2つあり、1つ目は「エサ」です。
一般的に羊は放牧して、青草を食べて育ちます。青草で育った羊は羊独特の香りが強くなります。一方で峯村さんのところでは干草を与えています。そのため、羊独特の香りがマイルドになるそうです。
そして、もう一つ。穀物と一緒に与える麦、ふすま粉、とうもろこし、ビール粕、おからにも秘密がありました。これらのエサは、
「羊に与えているのではなく、羊のなかの微生物に与えている感覚」
と峯村さんは仰っていました。羊は草を食べることで、身体を動かすエネルギーや、身体を構成するタンパク質を補っています。それらのエネルギーであったり、タンパク質は羊ではなく、実は羊の胃の中に住む微生物たちが、草の成分を作り替えて供給しています。ふすま粉や、おからなど、食物繊維を豊富に含むエサを与えてその微生物たちの住みやすい環境を整えてあげることで微生物の働きがよくなり、肉質の良い羊を育てるのに繋がっているそうです。峯村さんは羊にとっての管理栄養士さんですね。
2つ目は「羊にとってのストレスを極力少なく育てる」ということです。
羊の祖先は中央アジアで生まれたため、比較的乾燥した気候を好みます。なので、もみ殻を敷き、湿気を吸う工夫をされていました。そして、羊を育てている場所は標高も高く、平地より風通しも良いので、夏の暑さや湿気も抑えられるとても良い立地だと思いました。
また、人間も羊にとってはストレスなので、必要以上の接触は避けているそうです。
小さなことのようですが、羊のストレスになりうることをひとつひとつ無くすことで、エサをよく食べるようになり、肉質も良い美味しい羊を育てるのに繋がるのだということを教えていただきました。
6月4日に開催するサフォークのワイン会では、お肉から骨まで全ての部位を使って、フルコースを準備しています。というお話をした時に、峯村さんが
「エスポワールさんのように枝肉で仕入れて、肉から骨まで全て使ってもらえると育てた側は本当に嬉しい」
と仰っていました。余すことなくサフォーク羊の全てを使い切ることでも生産者さんへの敬意や感謝を示せることがわかりました。私たちもそのような技術と感謝の気持ちを持った料理人になりたいとあらためて思いました!
また、見学後にはサフォーク羊のお肉を実際にいただくことができました。ハラミ肉の部位はしっかりとした旨味をもっており、いつまでも噛んでいたくなるようなお肉でした。驚いたのはバラ肉の脂身の部分です。
一般的に羊の香りは脂身につくのですが、全くその香りはなく、むしろ甘く感じられました。
この甘味は穀物のエサに含まれてるビール粕や、とうもろこし、おからからくる甘味なのかなと想像しながらいただきました。
今回お話を伺って再認識したのは、これだけ手をかけて、育て方にもこだわり、なにより、羊のことを思って育てている峯村さんのサフォーク羊が美味しくないわけがない!ということでした。
峯村さんには貴重なお時間を使って案内していただきとても良い学びになりました。本当にありがとございました!