2024.08.30

登美の丘ワイナリーでの食事会に出張料理をしてきました!

先日7月29日は、山梨県のサントリー登美の丘ワイナリーに特別な食事会の料理を作りにいってきました。

1909年に開園された歴史あるワイナリーはロケーションも素晴らしく、施設から眺める広いブドウ畑の向こうには富士山が見えるという立地。

この日も好天に恵まれ(猛暑でした)富士山を眺めることが出来ました。

今回のゲストは、ワイン国際コンクールの評価者でシンガポールのワインジャーナリストのPoh Tiongさんとその関係者の12名さまでした。甲州のアンバサダーも務め、今回は日本のワイナリーを数か所訪問されるとの事でした。

また、Poh Tiongさんは大変な食通で、書籍も出版されているとの事で、私たちも大変光栄な機会をいただきました。

この日にむけて、登美の丘ワイナリーのチーフエノロジスト(醸造長)の椎名さんや関係の方々と何度も打合せをしました。ちなみに椎名さんは、サントリーが所有するボルドーのシャトーラグランジュで副会長をされていた方です!

事前に提供ワインについての情報、料理との相性についても細かく打つ合わせをして当日を迎えました。登美の丘ワイナリーのレストラン厨房を借りての準備はいつもの環境とは違うため、緊張感もありましたが、直前に椎名さんとのソースの確認もし、料理は万全に整えお客様を待ちました。

   

同じ山梨の白州のウィスキー蒸留所の見学終え到着したお客様方はとてもフランクで、私たちの緊張を逆に和らげてくれました!

ウェルカムワインとアミューズから楽しんで下さり、料理がスタートしてからはあっという間の時間でしたが、登美の丘ワイナリーで長年の試行錯誤から生まれた素晴らしいワインと、エスポワール渾身の料理をご堪能いただきました!

最後はシェフも交えての記念撮影をしていただき、皆さまには大変喜んでいただけたようで大変充実した食事会でした。

サントリーの方々には、エスポワールまで打ち合わせに来ていただいたり多くのやり取り有難うございました。

ワインの個性、食材、料理の個性を生かすための調理や微調整は大変勉強になりました。今後もさらに料理とワインのマリアージュを追求していきたいと思います。

 

<料理とワインとの詳細解説は下記しています>

 

・信州サーモンと豚コンフィ2種類のグジェール 山椒風味 → 立科甲州 2022

2種のグジェールの一つは、雪解けの清流で育った長野県にしかいない魚の信州サーモン(ニジマス×ブラウントラウト)をパプリカと合わせてムースにしたものを、イカスミを混ぜ込んだシュー生地にサンドしています。上には苦みを抜いたレモンの皮をさわやかさのアクセントとして、少量添えています。もう一つは、若鶏と豚舌で食感の違うコンフィを作り、そこにわずか山椒の実を加えてサンドします。(痺れる味はありません)こちらのシュー生地にはチーズを加え、仕上げにさわやかな香りの山椒の葉をあしらっています。

ソースはフレンチドレッシングに、細かく刻んだフレッシュハーブ(ディル、セルフィーユ)を加えて仕上げます。2種類のタイプの違ったグジェールをお楽しみいただきました。

ワインとのマリアージュ

・2種類の異なる味わいのグジェールですが、両方とも、立科甲州のさわやかな香りとはっきりした酸の印象、そしてわずかに硬質的にもとれる収斂性を持った味わいに調和するように味を調えています。一つは信州サーモンにクリームを加えたまろやかなムース、もうひとつは動物性の脂分を持った豚と鶏のペーストで、それぞれのグジェールの上に乗せたレモン、山椒の葉がアクセントとして、いろいろなワインの側面を感じていただけると思います。また、甘酸っぱいハーブのソースが、さらに料理とワインの相性を高めてくれます。

 

 

・信州産豚肉のパテアンクルート セロリアックのピュレと夏野菜のティアン → 登美の丘甲州 2022

 信州で健康的に育てた豚はクセがなく穏やかで繊細なお肉の味がストレートに味わえます。中でもうまみのある肩ロースと腕肉を粗びきと中挽きにして香ばしく焼き色を付けて混ぜ込み、パイ生地でくるんで焼いています。味に深みを出すためにわずかにレバーとマルサラ酒を加え隠し味にしています。小さなパテアンクルートですがお肉の様々な食感、脂のコク、香ばしさ感じていただければと思います。

付け合わせは夏野菜の代表である、トマト、ナス、ズッキーニを薄くスライスしオリーブオイルを振って加熱したものと、地元農家が育てたさわやかな香りを持つセロリアックをピュレにし重ねてオーブン焼きにします。野菜の味をお楽しみいただく付け合わせです。ソースは、わずかな柑橘の香りをつけるためにキンカンをドライパウダーにしたものとピスタチオを細かく砕き、白ワインヴィネガーと混ぜ合わせて、パテアンクルートの周りに流します。優しい酸味があり、お肉や野菜とうまくマッチします。

 ワインとのマリアージュ

 登美の丘甲州と立科甲州の違いを、料理と合わせることでさらに感じていただくことをイメージしています。

パテアンクルートのパイ生地、バターの風味や、豚肉の適度な脂分がもたらす優しいうまみと味わいが、登美の丘甲州のアタックの柔らかさと中盤にかけて酸が持続する味わいにフィットすると思います。そこに表面にこんがり焼き色を付けたお肉を入れることでさらに深みやうまみが増し、ワインとさらに同調します。

付け合わせている野菜のティアンはワインの味わいをクリアに引き立たせ、また、わずかなキンカンの香りと程よい酸味を持たせたソースは、柑橘の風味を持つ甲州の個性を消さずに寄り添うイメージです。

・佐久市産鯉のムースとカダイフ巻き ブールブランソース 天然夏キノコ添え → 登美 甲州 2023 

 長野県佐久地域の鯉は千曲川の清流で育てるため、沼地の鯉のようなくさみがなく上質な身質となります。鯉の小さな切り身をパートカダイフ(糸状の生地)に巻き、生地はサクサクで身はふっくらとなるようさっと油で揚げます。

一緒に盛り合わせるムースは、鯉の身をきめ細かくすり身にし、クリームと卵を加えて蒸して加熱します。上質な鯉の優しい味わいが質感も含めて感じられると思います。ソースはクラシックなブールブランソースで、野菜と白ワインでとったブイヨンをベースにクリームとバターで作りますが、鯉の味わいと調和するようバランスを取っています。

付け合わせの天然キノコは、夏にとれるポルチーニと同じ仲間の「アカヤマドリタケ」「ヤマドリタケモドキ」をバターとピーナッツオイルでソテーします。シンプルな調理ですが、キノコの持つうま味を油分と合わせてさらに引き出すことができます。

ワインとのマリアージュ

登美甲州は、果実の味わいのスケールが大きく、酸も備わりさらに甲州の特徴といえる細かな収斂性がありますので、それらをブールブランソースによって和らげ、ワインの個性はそのままに佐久産の鯉の持つ上品でソフトな味わいをムースで楽しんでいただきます。

またパートカダイフで包んでさっと揚げた鯉は、揚げ物と登美甲州の相性の良さを感じていただけるでしょう。

付け合わせのバターでソテーしたうま味たっぷりの天然キノコには登美甲州の酸が合います。凝縮した旨味に柑橘を絞ったようなイメージで、魚と合わせるペアリングとは違った味わいを感じていただけると思います。

 

・国産鹿ロースのポワレとジャガイモのグラタン 香茸とジビエの赤ワインソース → 登美 赤 2021、2023

 大変良い状態で仕留められた野生の日本鹿のうま味をさらに引き出すため、前日より塩を振り過剰な水分を除いています。きめ細かな肉質である背ロースの肉汁を逃さないよう低温でゆっくり焼き上げたお肉料理です。ソースは鹿の骨と赤ワイン、香味野菜で作り、そこに自然の恵みでもある、コウタケ(香茸)というキノコを加えています。キノコを加えることでソースの余韻がさらに長くなります。また、鉄分豊富な赤身の鹿肉と相性の良いジョニパーベリー(杜松の実)の香りを持つジンを仕上げに加えます。

付け合わせには、ジャガイモをクリームと少量のにんにくでオーブン焼きにしたグラタン風のドフィノワを添えます。クリーム系のジャガイモの味わいが濃厚な赤ワインソースの味をまろやかなタッチにしてくれます。

ワインとのマリアージュ

前日にプティサレして旨味を高めた鹿肉は、赤身由来の鉄分を併せ持った味わいで、登美赤21のボリュームとアフターのタンニン、余韻の長さにとてもよくマッチします。ソースにはコウタケとジンを使う事で旨味と香りの複雑さを強め、登美赤21の複雑さと絶妙なバランスを引き出しています。

また登美赤23は、凝縮度の高い果実味と大柄なタンニンを持つスタイルですので、煮詰めたフォンドシュヴルイユをよく絡めた鹿には非常によくマッチします。

付け合わせのジャガイモグラタンは、ソースの味わい、ワインの強さを和らげてくれる存在となります。

 

・千曲市産2種類のフレッシュあんずのパフェ 杏仁の香り →ノーブルダルジャン 2011

信州でこの時期最終で出回るフレッシュあんずを味わっていただきたくグラスに詰め、パフェスタイルにしています。杏子は酸が強く、加工用にされることが多いのですが、今回の品種は生食用として品種改良された、ハーコットと信州大実の2種類を使っています。ハーコットは甘みが強く、信州大実は甘みと酸味を持ち合わせる品種です。今回はあんずのもう一つの魅力である種を使って杏仁の香りをつけたブランマンジェを作りグラスの中に加えています。食感のアクセントとしてあんずと相性のよいアールグレイのクッキーを加えています。フレッシュあんずの上には、あんずプューレの薄焼き、あんず、杏仁のシャーベットを盛り合わせます。

杏子の魅力をお楽しみいただけるデザートです。

ワインとのマリアージュ

あんずのデザートには、フレッシュあんずの味のバランスと、杏仁の香りをつけたブランマンジェに味わいのトーンが合うように、ノーブルダルジャン2011をご用意いただきました。

今年のあんずは粒が少ないため実が大きく、熟度が高くよりバランスがとれた味わいです。熟した杏子は貴腐ワインにぴったりです。リースリング主体で酸の印象もはっきりしていますので、同調するマリアージュがお楽しみいただけると思います。

 

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