記憶に残るワイン

500種類 2,500本を超える豊富なワインで、楽しい時間を演出

20年間、お客様へワインをご提供させて頂く中で沢山のエピソードがありますが
特に記憶にあるワインをご紹介します。

– 記憶に残るワイン –

1974年 シャトームートンロートシルト

ご来店の2週間ほど前にワインが送られてきました。厳重に包装されたボトルは、フランスボルドー地方の5大シャトーの一つであるシャトームートンロートシルトの紋章入りの紙で包まれていました。お客様に到着したこと伝え包み紙を外すと、ワインの銘柄は「Chateau Mouton Rothschild 1974年」でした。当日までパニエに寝かせ地下セラーで静かに保管しました。
お客様ご来店の当日、この日に合わせシェフと料理を考え、メインディッシュには仔羊の背ロースのロティを準備し、ワインの特長に合わせて背脂の量を調整し万全で臨んだディナーです。最初はシャンパンを召し上がり、少し緊張した雰囲気でいよいよワインの登場です。テーブルにお預かりしたワインをお持ちすると、ワインの銘柄とヴィンテージを確認し女性は驚いた表情で男性を見ました。男性から「わかるだろ?」との短い言葉と女性のうなずく返事がありました。それは結婚のプロポーズだったのは言うまでもありません。このムートンロートシルトは女性のバースデーイヤーのワインだったのです。ムートンロートシルトが1級に昇格した1973年の翌年は厳しい作柄となり生産数も少なく探し出すことは大変困難だったかと思います。しかもシャトーからリリースされた際の紙に包まれた状態という素晴らしいコンディションは、この大事な日に懸ける強い思いが感じられました。なんという素敵な飲み物なのだろうとあらためて実感し、お二人の笑顔とワインの銘柄は忘れられないものとなりました。
その後、お二人はエスポワールで挙式をあげられました。
今でもムートンロートシルトがテーブルに置かれ、お二人がお食事を楽しんでいるシーンが鮮明に記憶に残っています。

1995年 シャブリ ブランショ グランクリュ フランソワ・ラブノー

「1995年 Chablis Blanche grand cru」特級畑から作られるシャブリの最高峰です。フランソワ・ラブノーという作り手は古典的な手法でワインを作ります。この地域の特長であるミネラル感は他のどの作り手よりも強く、その奥に果実味を持った素晴らしいワインです。若いうちはその強いミネラル故、閉じた印象を受けますが、熟成と共に素晴らしい味わいとなります。
ご来店時は奥様のお好きな銘柄のシャンパンで乾杯されました。そしてシャブリのボトルをお客様にお見せし、1杯目は開栓したボトルからそのままグラスにお注ぎしました。残りはデカンターに移し替えふんだんに空気に触れさせバルーンタイプの大きなグラスに2杯目をお注ぎしました。温度を下げて提供した1杯目はこのワインの特徴でもある硬さが際立ちすこし控えめな反応でした。しかし2杯目は温度が上がり、先ほどにはなかった強烈な蜂蜜の香り、はっきり甘みを感じさせる果実感が感じられ、まるで違う印象に3名様ともびっくりされていました。「シャブリ地区はブドウを栽培するには非常に過酷な環境で、人々も苦労をしてワインを作ります。その苦労がシャブリの味になるといわれます。SOLTYな(塩っぽい)と表現されることもあり、苦労した汗の味と例えられることもあります。しかしその苦労の味の後には、素晴らしい果実味とほかの地域にはない味わいが感じられます。努力をした後には必ず素晴らしいことが待っていると思います。頑張ってください」とワインの解説とメッセージを送らせていただきました。このワインの味わいも大変気にいってくださり、ご家族の会話も途切れることがなくお祝いの食事をお楽しみいただくことが出来ました。ワインの味は人の心に届くのだなと実感した銘柄です。